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モンゴル再訪
モンゴルに初めて出会ったのは、昨年の9月のことだった。
就職活動を終え、年明けの卒業論文の執筆に追われていた時分、なぜか急に「騎馬民族の末裔を見たい、そのためにはモンゴルへ行くしかない」という考えが頭に浮かんだ。特に騎馬民族関連の本を読んだわけでもなく、モンゴルに関する話を聞いたわけでもない。本当になんとなく、モンゴルへ行きたいと思ったのだった。
すぐさまモンゴルツアーについて検索すると、一番頭に出てきたのがツォクトモンゴル乗馬ツアーのホームページだった。中身はちゃんと日本語で書かれており、スタッフの顔写真まで丁寧に載っていたが、「本当に大丈夫かなぁ…」と怪しんだりした。何せ、遊牧民が暮らしていて、朝青龍の出身国ということ以外、モンゴルという国のことを何も知らなかったのだ。それまでろくに海外に出たことのない私にとっては、想像のつかない場所であった。
だがもやもやした不安より、行きたいという気持ちが勝利した。ええいままよと申込のメールを送ると、返ってきたのは日本窓口の方からの返信だった。丁寧な対応に安心し、細かいプランを決め、とうとうモンゴルの地へ飛び立つこととなった。
モンゴルで触れるものは、何もかも痛いくらいに色鮮やかに映った。雲ひとつない空、青々と光る草原、風の匂い、馬の蹄の音、聳える山、色とりどりの野の花々、お世話になったツォクト・ゆうすけファミリーの笑顔。五感がいっぱいになる感覚に飲み込まれないように、立っているのがやっとだった。たった4泊5日の滞在であったが、モンゴルは私の心に大きな爪痕を残した。
年が明け、卒業論文を提出し、ようやく落ち着いた頃。日々モンゴルのことを考えて過ごしていた。絶対にまた来る、と言い残してきたことを何度も反芻していた。学生生活も終わりを迎えようとしている。心ゆくまでモンゴルに遊びにいけるのは、ひょっとするとこの春休みが最後かもしれない。この機会を逃す訳にはいかない。今度はほとんど迷わなかった。2月22日から3月22日まで丸々4週間、モンゴルに滞在することを決め、たんたんと準備を進めた。
冬の滞在は初めてだった。これくらいの長さの滞在になると逆に何を持って行ったらいいか分からず、最低限の着替えと防寒装備のみ揃えてあとは現地調達でいいや、ということに。
2月22日、出発の日。朝から寝坊し、ターミナルを間違えた上に、ATMを見つけられず、搭乗までヒヤヒヤしっぱなし。約5時間のフライトを終え、20時半過ぎにチンギスハーン国際空港着。空港まで迎えに来てくれていたのは、前回も一度お会いしたツォクトさんの奥さんのお母さんであった。21時過ぎ、車で空港を出発してゆうすけさんのゲルへ向かう。
途中までは順調だった。が、途中でエンジンの表示ランプが何やらおかしい。徐々にエンジンが動かなくなり、とうとう車が止まってしまった。どうやらバッテリーが上がってしまったらしい。というわけで、ツォクトさんに迎えに来てもらう。到着して早速の楽しい(?)展開に、心配している周りの皆とは裏腹にテンションがあがる。しばらくするとツォクトさんが登場。感動の再会!!ザクサーさんとツォクトサイハンさんも一緒だ。
そこからまた車を走らせる。延々と道路を走っていたが、途中で急に道路を外れ、道無き道を進み出す。昨年来た時もこの展開だったが、単純に怖い。だが、道路が整備されているのはせいぜい町の近くまでくらい。田舎に行く以上、この展開は避けられないのだろう。それにしてもこんな真っ暗な中、道も灯りもないのにどうやって方向を見定めているんだろうか。いくら慣れているとはいえ、記憶と方向感覚だけで分かるものなのだろうか。
本当にこっちですか???なんでわかるんですか??などとツォクトさんを質問責めにしていると、あっという間にゲル着。流石ツォクトさん。
ゆうすけさん、ナイガーさん、オーゴナー、子ども達がお出迎えしてくれる。またしても感動の再会。知らないおじさんが一人いてびっくりしたが、この冬住み込みで仕事を手伝いに来てくれている人で、ジャギーというそうだ。ゆうすけさん顔変わったな…と思っていたら人違いだったのね、と一人で納得。晩御飯ということで、ボーズをいただく。ツァガンサルのご馳走の残りらしい。
外はかなり冷え込んでいるのに対し、ゲルの中は汗をかくくらい暑かった。火にあたってご飯などを食べていると、もはや半袖でもいい気がしてくるくらいの暖かさ。
ゲルのストーブに火を入れてもらい、日記をしたためたところでぼちぼち就寝。
備忘録として、またこれからモンゴルに旅行する方々への情報提供として、この滞在記を執筆する。
冬モンゴル旅行の持ち物
実際に持って行ったもの、持っていけばよかったと後悔したもの、現地で揃えて良いものなどをまとめました。
【持って行ったもの】
・着替え4着ぶん
どう考えても4週間分の量ではないが、私自身は洗濯すればいいやと思い多くは持って行かなかった。
・パーカー2枚、スウェット3枚、ユニクロのストレッチパンツ2枚
この辺は好み。感覚的には2枚で5日間くらい着回すイメージ。もっとも、私はもう少し着ていたが…
・ヒートテック5枚ほど
これも好み。外に出て乗馬などをするなら必須だろう。
・帽子
耳が隠れるものが良い。
・マフラー
ネックウォーマーでも良い。乗馬中、マフラーが解けて広がってしまうと馬がびっくりする可能性があるので、解けないようしっかり結ぶかネックウォーマーの着用を心がけるといいだろう。
・手袋
なるべく分厚いものが良い。乗馬をするときは、分厚すぎると手綱を握れないので、薄めのものを着用するのが良いだろう。
・ポケットティッシュ
基本的にティッシュは現地にないため、持参推奨(トイレットペーパーならもらえる)。
・サングラス
凍っている川などを肉眼で見ると目がチカチカすることもあるため、着用を勧める。
・カイロ
あまり使わないが、夜開けて持って寝ると、朝方凍えなくて済む。低温やけどに注意。
現地の人はほとんど使わないので、お土産にはならないかなぁ、、という感触。
・日焼け止め・メイク道具一式
曇りの日でも紫外線がかなり強いため、強めの日焼け止めを持っていくと無難。
メイクも肌を守る術の一つであろう。
・汗拭きシート
ゲルではシャワーが浴びられない。寝る前に体を拭くとスッキリするかもしれない。
・アルコールシート
ホーショールを食べてべとべとになった手を拭きたいときはこれ。
・化粧水、保湿液
必須。気持ち多めに持って行ってばしゃばしゃ使うくらいでちょうどいいかも。
・ビニール袋・ポリ袋など
ゴミを入れたり、洗濯物を入れたり、荷物を小分けにしたりするのに何かと使う。
・現金
日本円で5万円くらいは持って行った。ウランバートル市内ではクレジットカードを使えるところも多いため、多額のトゥグルクを用意する必要はない。しかし、田舎のお店では基本的に現金での支払いのみが可能なところも多いため、1万円分くらいは換えていくと安心して買い物できる。ちなみに、ウランバートル市内のナラントールザハではカードが使えない。両替はザハの奥にある建物の中の銀行でできる。
【現地で調達したもの】
・靴(ブーツ)
ナラントールザハで購入。日本円で約5000円。田舎で履く予定だったため、ヒールがほとんどなく馬にも乗りやすいロングブーツを選んだ。ロングブーツはふくらはぎを完全に覆ってくれるので防寒具としても優秀。
・靴下
日本の薄いものでは寒気を凌げない。スキー用などの分厚いものを準備するか、薄いものを重ねばきすると良い。
【持って行かなかったが、必要だと感じたもの】
・半袖シャツ
特に夜になると火を焚くため、ゲルの中がものすごく暑くなる。ヒートテック1枚でも暑いほどなので、重ね着がオススメ。
・分厚い靴下
日本で履いているような靴下は薄くてお話にならないが、重ねれば比較的寒さをしのげる。
・耳あて
長い時間外にいると、風に当たって耳が冷たくなり、頭が痛くなることがある。乗馬するなら耳あてか耳の隠れる帽子は必須。
・乾電池式モバイルバッテリー
現地では電源の確保が難しいため、モバイルバッテリーは必須。長期間滞在する場合は、ソーラー充電式もしくは乾電池充電式のモバイルバッテリーをいくつか持っていくと安心である。
【その他】
田舎では風の強い日、土ぼこりが立つことがままあるためマスクがあると安心。
土ぼこりで鼻炎が出たりしたときのために、鼻炎薬や目薬などを持っていくとなお良いだろう。
一家と出会った人々の紹介
・ツォクト
本名はツォクトバヤル。本ツアー会社の社長さん。長身。北九州に留学していたことがあるらしく、日本語がうまい。現在奥さんと2歳?のお子さんがいる。ツアー中は寒くないか、ご飯は足りているか、どこか行きたいところはあるかなど色々と気を遣いすぎるほど遣ってくださる。しかし、トランプ中にはかなり雑なプレーで煽りをかましてくるなど、テキトーな一面も見られる。
・ゆうすけ
ホームステイ先のご主人で、ツォクトの弟。本名はニャムオチル。「ゆうすけ」は日本人にもらった日本名らしい。多くのお客さんと接するうちに日本語を少しずつ覚えていったとのこと。お酒にはそれほど強くない(モンゴル人基準)上に、朝にも弱い。美味しい飲み物だから!といって馬のビタミン剤(一応無害)を差し出してくるなど、お茶目なところもある。乗馬の腕前はもちろんピカイチで、馬を育てる技術も受け継いでいるとのこと。彼が育てた馬はナーダムでたびたび優勝しており、ゲルの中には多くのメダルが飾られている。
・ナイガー
ゆうすけの奥さん。本名はナイガル。洗濯、料理、掃除を一人で全てこなし、家で暴れまわる三人兄弟を時に優しく、時に厳しく育てている、優しくて頼もしいお母さん。
鍋ひとつでボーズ、ホーショール、ツォイワンなどなどなんでも作ってくれる。日本語は勉強中らしく、少しわかる。保湿パックをお土産で持って行ったら毎晩使ってくれていた。
・子供達
ゆうすけナイガー夫妻の子どもたち。賢いが気分屋さんの長男テムーレン、働き者で力の強い次男トゥルー、甘え上手で生真面目な三男トゥブシンの悪ガキトリオ。トゥルーとトゥブシンは双子である。数時間に一回は喧嘩しており、いつも誰か一人は泣いているが、一瞬で仲直りして一緒の布団に潜り込むところまでがワンセットである。3人ともお米が好きで、幼稚園は嫌いらしい。今年の9月にテムーレンは小学校へ入学。おめでとうございます!!トゥルーは最近乗馬を始めたとか。
・オーゴナー
一家の仕事を手伝う、働き者の青年。本名はオーガンバット(本当はもっと長いらしい)。現在19歳。ピアスの穴いったい何個あいてるの??聞いてみたい。割と最近の洋楽も知っているあたり、流行には敏感らしい。一方仕事に対してはかなり真面目で、いつも何かと動き回っている。馬に乗り始めたのは12歳くらいかららしいが、裸馬(鞍をつけていない馬)を涼しい顔で乗りこなすなど、乗馬の腕前はかなりのものと見える。
・ジャギー
冬の間一家に住み込みで手伝いに来ていた、カザフ人のおじさん。独身で、40歳くらい。料理も洗濯も自分でこなすため、こちらができないと一喝される。神経衰弱がめちゃくちゃ強いが、豚のしっぽはめちゃくちゃ弱い。お酒が好きで、酔っ払っうと白鵬の誕生日をひたすら祝い出すという謎行動に出る。あまり馬に乗っているのをみたことがないが、何か理由でもあるのだろうか…?
・ジャッキー
冬営地でのお隣さん。カザフ人で、本名はザルコム。28歳くらい。ジャギーとしゃべるときはカザフ語らしく、何をいっているかみんな分からなかった。ひょうきん者で、よく冗談を言っては笑わせにくる。お酒はほとんど飲まない。オーゴナーと仲良しで、よくつるんでいる。
・アギー
乗馬ガイド。本名はアッセンベー。40歳ちょっと、独身。日本に住んでいたことがあるらしく、日本語が少しわかるが、滞在後半で昨年以来の再会をした際はあまり喋ってくれなかった。しかしお酒が入るとひたすら日本語で「すみません」「ごめんなさい」などと謎の謝罪を始めたり、調子よく日本語で喋ったりしてくれる。
・ザグサー
ツォクトの妹。本名はエルデネザガス。エルデネツーリストキャンプの支配人。馬で出かけたりした際にお昼ご飯を作ってきてくれる。日本語が少しわかるみたい。ナライハに住んでおり、夫婦でお店を経営している。
・ツォクトサイハン
ザグサーの夫。ナライハでお店を経営している。
・ムーギー(ムンフエルデネ)
ナイガーの妹の子。3歳の男の子。将来の夢は歌手らしい。歌とダンスが好き。
・ツォクトのお母さん
ナライハに住んでいる。
・ナイガーのお母さん
ナライハに住んでいる。ツァイはしょっぱめで美味しい。
・ツォクト・ゆうすけのお兄さんとそのファミリー
しばしば遊びにくる。お土産にお肉とか持ってきてくれる。
・エンフボルド
ツォクトのお兄さんの知り合いの子。10歳。乗馬を習いにたびたびゆうすけゲルに来ているらしい。
・ナナさん
日本語ガイド。30歳くらい。モンゴルで数年お勤めした後、日本に留学。東京の大学を出て、今は通訳などのお仕事をしているらしい。
再訪、チンギスハーン騎馬像
天気は快晴、冷え込む日。8時ごろ起床して中央ゲルに行くと、ナイガーさん以外はまだお休みのご様子。ツァイを作るのに牛乳がいるとのことで、乳搾りに出かけるナイガーさんを追いかけて、外へ。
相変わらずすごいスピードで絞っていくナイガー姉さん。指圧がまるで違う…
朝ごはんをいただいて、のんびり中央ゲルで子供達と過ごす。ゆうすけさんは9時半ごろ起床。
11時前ごろ、ゆうすけ、オーゴナーに急に「車に乗れ」と言われる。何かと思ったら、チンギスハーン騎馬像に連れて行ってくれるとのこと。やったあ!前回は2時間ほどかけて馬で行き、お尻が死んだ記憶しかないが、今回はその心配はなさそうだ。
ゲルを出発し、車でトーラ川の上を渡っていく。それにしても綺麗に凍るものだ。途中でタイヤが氷にはまらないか、ヒヤヒヤしながら助手席で写真を撮る。
川を渡り終わった後は、結構荒い道が続く。結構な振動。下手したら酔いそう…
しばらく走ると車が止まる。どうやら、ゆうすけさんの知り合いのゲルに来たみたい。大勢の羊たちが柵の中で佇んでいたが、これは夏の間ゆうすけさんが飼っていた羊で、冬の間は預かってもらっているのだとか。確かに、今いるゲルには馬と牛しかいないもんね。
今日はこの中の羊を一匹選んで持って帰るらしい。ご飯にするのかな?
羊を捕まえたオーゴナー、こっちに歩いてくるゆうすけさん、固唾を飲んで見守る羊たち。シャッターのタイミングも絶妙だったせいで二人の迫力がすごい。
そしてついに始まる、羊のと殺。(当然ながら)見るのは初めてだったので、やや緊張。
手順としては
・首を縄で縛って息を止める
・お腹を切って手を入れ、心臓の血管を千切り完全に息の根を止める
・内臓をかき出し、中に溜まった血をボウルですくい出す
・皮をはいだり肉を小さく切り分けたりして解体していく
と言った流れ。最初は暴れまわって抵抗していた羊が動かなくなって目から光が消える瞬間は流石にちょっと怖かったけど、皮をはいだあたりから完全に「お肉」にしか見えなくなった。人間って不思議。
ここでゲルに招き入れられ、奥さんが羊の内臓を洗うのを見ながらボーズをご馳走になる。どうもツァガンサルの残りみたい。ツァイは家によって微妙に味が違って面白い。ナイガーさんのよりややしょっぱめかな??
解体はブルーシートの上でやっていたが、そのブルーシートにすら血はほとんどこぼれていなかった。心臓の血管を切った後に血が外に出ないように上手く逆流?させているのだろうか。すごい技術。
お腹がいっぱいになったところで、切り分けた羊を袋に詰めいざ出発!さようなら羊たち。
少し走ると、懐かしのチンギスハン騎馬像に到着。お久しぶりです!!
それにしてもいい天気。山の上の方はまだだいぶ白い。
(これは誰だ…?記念に一枚。)
前回来た時は中には入らなかったけど、今回は入ることに。
一人あたりの入館料は現地人7000トゥグルク(大人)、旅行者30000トゥグルク。日本円に直すとそれぞれ約320円、約1360円。旅行客はまあまあとるのね。トゥグルク換えてきてヨカッタ…
中に入ると、目の前にめちゃめちゃ大きいモンゴルブーツ、これまた大きいムチなどが展示されている。お土産やさんもあったので、ポストカードを購入。2枚で2000トゥグルク。
地下にはモンゴルの民族文化にまつわるミニ博物館のようなコーナーがある。ゲルの変遷とか、チンギスハーンをはじめとする歴史上の人物に関する展示が置かれていたり。
さらに騎馬像の上の方まで登っていくと、なんと馬の頭の上に出ることができる。狭めではあるが、周りの景色を一望できる。もし夏だったら一面に青い草原が広がっていたことでしょう。
ゆうすけさんと。
天然のスケートリンク・凍りついたトーラ川へ!
遊牧民の男の人の冬仕事の一つに、生活用水の調達がある。そのために川へ行くというので、同行した。
ゲルから歩いて10分弱でトーラ川に出る。一面氷。氷が薄いところと厚いところがあり、上を歩くときは注意しなければならない。
冬は川が凍りついているので、そのまま水をくむことはできない。金属の棒で氷に穴を開け、ショベルも使って崩れた氷をすくってどかし、その下に流れている水を汲む。
みんな何気なく氷をすくっていたが、これが私にとってはかなり骨の折れる作業だった。そもそもショベルが重たい…。あえなく断念し、スケート活動に勤しむことにした。
氷の断片。透きとおっていて綺麗。
家から持ってきたソリに乗って遊ぶこどもたち。氷の上を走り回ったり、ソリに乗って引っ張り合いっこしたり。小さい頃からこういう環境で過ごしていたら、そりゃ体力もつくわな…と納得した。
凍った川は、冬ならではの景色。厳しくそっけない、泰然としたモンゴルの自然をそのまま表しているようだ。
冬のモンゴルでの一日
7時半頃、ナイガーさんが起床。ストーブに火を入れてくれる。牛の乳搾りをして、ツァイを沸かしてくれる。ついでに朝ごはん。朝ごはんはスーテーツァイ、タルハ(パン)、昨夜のご飯の残りなど。
8時頃、オーゴナー、ジャギーが起床。少し遅れてゆうすけさんも起床。馬小屋の掃除に始まり、アルガリ(乾燥した牛の糞。よく燃えるので燃料になる)集め、馬を川に水を飲ませに行ったりと、午前いっぱい働く。
ナイガーさんはご飯の片付け、ゲルの掃除、子どもたちの相手などをして過ごしている。
だいたい12時~13時頃、お昼ご飯。明確に時間が決まっているわけではなく、仕事がひと段落したら食べると言う感じらしい。
ご飯が終わると割とのんびり。馬の様子を見たり、お昼寝をしたりして過ごす。
夕方くらいになると、山の方にいる牛たちをゲルの方まで追ってくる。夜いつでも様子を見に行けるようにするためらしい。
夜、牛たちに餌をやる。同時に馬たちの餌(麦を煮たもの)の準備もして、そのあと晩御飯。
馬たちに餌をやる。エサ袋を首に引っ掛けてくくりつけ、朝までそのまま放置するらしい。
ぼちぼち就寝。
寒さについて
◆どうも暖冬だったらしく、私のいた時期は雪も降らず、気温は下がってもせいぜいマイナス15度くらいだった。夜はもう少し下がるが、日本と違って乾燥しているため体感気温はそこまで低くない。個人的には京都とかの方が寒かったような気がする…。
◆ただ空気はかなり乾燥しているので、保湿はしっかりとすること。喉や鼻腔もガサガサになってしまう可能性が高いので、気になるようであればマスクの着用がオススメ。
滞在中に鼻血が止まらなかった時期があったが、今考えると乾燥のせいで鼻腔内が荒れていたのであろう。怪我なども比較的治りにくいため、傷ついた場所はしっかり保湿をするように心がけると良い。
◆田舎では風の強い日、土ぼこりが立つことがままある。私はこれでアレルギー反応を起こしてくしゃみと鼻水が止まらなくなったので、風が強い日はなるべく出歩くのを控えるか、マスクを着用するのをおすすめする。
モンゴルで食べた料理
【ボーズ】
言わずと知れたモンゴル名物料理。小籠包のような見た目だが、中のお肉は牛か羊である。このままかぶりつくことが多いが、付け合わせの野菜と一緒に食べることも。熱々の状態で食べるときは肉汁に注意。
<作り方>
・小麦粉に水と塩を加えひたすら練り、生地を作る
・お肉を細かく刻んでミンチ状にした後、スパイスや塩で味付け
・生地を適当な大きさに切り分け、お肉を包んでキュッとひねる(上手くひねるのが難しい)
・鍋の中に並べて水を少し入れ、蓋をして蒸す
完成!
【ゴリヤシ】
ハンガリーの「グヤーシュ」という煮込み料理がロシアを経由してモンゴルに入ってきたもの。本来はもっとシチューのような汁気のある料理のはずだが、アレンジ可。知り合いのモンゴル人曰く、肉とジャガイモと人参が入って入ればなんとなくゴリヤシっぽくなるのでOKだそうだ。味はご想像の通り、肉じゃがに近い。
<作り方>
・お肉と野菜を適当な大きさに切る
・切った材料を塩で味付けしながら油で炒め、水を少し入れて蓋をして煮込む
完成!
【ノゴートイシュル】
野菜スープ。お馴染みのじゃがいも、にんじん、お肉に加え、キャベツなどが入っていることもある。
この中に麺を入れたものをゴリルタイ・シュル(小麦の麺入りのスープ)、お米を入れたものをボタータイ・シュル(お米入りのスープ)、にという。
【マントウ】
蒸しパン。ノゴートイシュルにつけて食べたり、お肉と食べたりする。名前の通り、中国から入ってきたものと思われる。綺麗な形に生地を巻くのはかなり難しい。
【ホーショール】
モンゴルの揚げ餃子。手で持ってそのままかぶ りつくことも多いが、付け合わせのチリソース味の野菜と一緒に食べるとまた違った味が楽しめる。モンゴルでは、ナーダムの時期になるとホーショールを売る屋台がたくさん街に出るらしい。ツァガンサルはボーズ、ナーダムはホーショール、というセットなんだとか。
モンゴルのトランプゲーム「モーシグ」ルール
「モーシグ」とは、モンゴルのトランプゲームの一つ。町の一角で、田舎のゲルで、モンゴル人たちが集まって何やら盛り上がっていることがあるが、近づいてみるとこのモーシグをワイワイとやっていることが多い。
滞在中、ファミリーがこのモーシグを毎晩のようにやっており、私も参加することになった。検索しても日本語でのルール解説が見つからなかったため、滞在中に見よう見まねで覚えたルールを整理した。モンゴルに行くときはトランプを持って行ってモーシグをやれば、一瞬で仲良くなれるぞ!
※モーシグは4人か5人で遊ぶ。6人以上は不可。
◆用意するもの
7、8、9、10、J、Q、K、Aのカード各4枚(4人でプレイするときは、7のカード4枚を除く)
◆ゲームの流れ
1.円形に座り、ディーラー(カードを配る人)を一人決める。
2.ディーラーは右隣の人に山札をカットしてもらい、左隣の人から時計回りに手札を5枚配る。配り終えたら、ディーラーは山札からカードを1枚ターンアップして、山札とともに机の上に置く。このターンアップしたカードは、ディーラーの手札になる(3.参照)。
なお、ここでディーラーが配る枚数を間違えると、その回は流れて仕事が次の人に回る。
3.ゲームに参加するかどうかを決める。参加しない場合、手札を捨てる。ディーラーが参加しない場合、ターンアップしたカードも捨てる。なお、最低2人はゲームに参加する必要がある。
4.ディーラーの左隣の人から、手札を好きな枚数山札からチェンジできる。山札がなくなるまでチェンジの順番は時計回りに回っていく。
5.ディーラーの左隣の人からゲームスタート。カードを1枚ずつ場に出し、一番強いカード(※後述)を出した人がその場に出されたカードの組をもらう。
6.5でカードをもらった人から、また同じようにカードを場に出していく。
7.5と6を繰り返し、全員の手札がなくなったら(=5回やったら)終了。手に入れたカードの組の数が獲得した点数となる。
8.15点先取で勝ち。1から7までを誰かが勝つまで繰り返す。1組も取れなかった場合、マイナス5点。
◆強いカードとは?
・基本的には、台札(その回で最初に場に出されたカード)のマークが一番強いマークとなる。
・しかし、ディーラーがターンアップしたカードのマークがそれよりも強い。
・同じマーク同士であれば、Aが一番強く、K、Q、…7の順に強くなる。
☆誰かの手札にAが4枚入っていた場合、その人の勝ちが確定し、ゲーム終了。
◆出すときのルール
・マストフォロー:台札と同じマークのカードを持っていれば、それを出さなければならないというルール。
ない場合は、ディーラーがターンアップしたカードのマークを出さなければならない。それもない場合は別のマークのカードを出す。
◆それ以外の基本的なこと
・他のプレイヤーの参加具合を見て参加するかどうか決められるとき、参加する人数が多く、自分の手札が弱ければ降りた方が良い(強いマークのカードが場に出ていっているということである)。
・強いマークのカードも数枚ないと厳しい。
・いかに自分の手札のランクを上げていくかが勝負となる。カードを出す順番はとても重要。
・でも体感65%くらいは運。気軽に参加しよう。
◆モーシグでよく使うモンゴル語
滞在中に教えてもらったモンゴル語を紹介。モーシグの場以外で使う機会があるかは不明だが、積極的に使ってみよう!!
【スートと数字】
・гил(ギル)スペード
・цэцэг(ツェツェグ)クラブ
・бунд(ボンド)ハート
・ дөрвөлжин(ドゥルブルジン)ダイヤ
・боол(ボール)ジャック
・хатан(ハトン)クイーン
・ ноён(ノョン)キング
・ тамга(タマガ)エース
【ゲーム中使う言葉】※個人差があります
Одоо хэн бэ?(オッドー ヘン ベー)「今(次)誰の番?」
Хогновш!(ホグノゥシ)「(手札が)ゴミばっかり」
Одоо би.(オッドービー)「次、俺の番」
Орсон.(オルスン)「(カードが)あった」※直訳は「入っていた」
Мод байхгүй.(モッド バェフグイ)「(カードが)ない」
Өнжсэн.(ウンジスン)「(この回は)休みます」
Хаясан.(ハイスン)「(カードを)捨てた」=「(この回は)休みます」
Миний/Надад зургаа байна.(ミニー/ナッダッド ゾルガー バェン)「6枚ありますが」
ажил(アジル)カードを配る仕事
Нохой!! (ノッホイ)「(Kが出た時に、Aより弱いのが出てしまったという自虐で)犬の方がマシだ!」※Нохойは「犬」
Боол эзэндэ үнэнч.(ボール エゼンデ ウネンチ)「(Jが出た時に)これで勝てる」
※ジョーカーはガーディアンなので、縁起が良いとされている数字らしい。
Жур(ジョル)「弱い」
Одоо хэний ажил бэ?(オッドー ヘニー アジル ウェ)「次誰がカードを配る番?」
Бугдийн идсэн.(ブグディーン イデスン)カードを全部もらう時に言う。
Аман хүзүү(アマンフズゥー)ディーラーの次の人のこと
Баярлалаа(バヤルララー)「(煽られた時)ありがとう!!」
Идэн тат(イッデン タット)「(カードの組をもらった次のターンでAを出すとき)全部もらうわ」
Босоод ав!(ボソード アヴ)「(カードを配るのを間違えた人に)立てよ!」
Харанхуй!(ハランホォイ)「(手札をまだ見てないけど)やるぜ!」
・杏(an)
1995年生まれ・九州出身。京都で4年間の大学生活を終えた後、上京して今は働いています。
大学4年生の夏休みに初めてモンゴルへ旅行して以来、その魅力にとりつかれてしまい、モンゴルの言語・歴史・経済などを日々勉強中です。モンゴル全土を旅することが目下の目標です。