Contents
冬の田舎の仕事
はじめに
こんにちは、Yukiです!2017年に初めて冬のモンゴルを体験してきました。
モンゴルの冬の最低気温は−20~30度から、ひどいときには−40度にもなるそうです。ゆうすけさん*曰く、−50度に達した年もあったとか…!私が行った11月中旬~12月初めは日中−15度前後、深夜〜朝方は−25度前後でした。
夏に見た青々とした草原は、一面の白い雪に覆われていました。モンゴルの冬は想像以上に寒く、それと同時に想像以上にきれいでした。普段は「食」記事を担当していますが、今回はツォクト遊牧民ゲルキャンプで見てきた、田舎の冬のお仕事についてまとめていきます(^^)
*ゆうすけさん:ツォクトさんの弟で、日本人に「ゆうすけ」という名前をつけてもらった遊牧民。馬の管理などを主に行っている方です
遊牧民の冬営地**
冬営地は夏営地から数十キロ離れた山の麓にありました。
ゆうすけさん一家のゲルの右隣に作業用ゲル、左には2畳ほどの物置があり、これらが一つの居住地エリアとして木の囲いで囲われています。その囲いに接するようにして西側に子牛と牛の小屋が一つずつ、その小屋の北側に干し草置き場を挟んで馬小屋がありました。
**営地:遊牧民がゲルを構え生活する場所。以前は四季に応じて移動していたと言われていますが、最近では春と秋の2回移動する家庭が多いようです
男性の仕事
主に男性がやる仕事から紹介します。
馬・牛のエサやり
冬は夏の草原に比べると、家畜たちが自分で食べられる草は少ないです。雪が積もっていない場所や薄く積もっている場所であれば雪をどけて食べられますが、やはり夏の草原と比べると、草の量も少ないし栄養価も高くはありません。また、雪が深く積もっているところだと、雪をかき分けて草にたどり着くこともできません。
そのため、人間が介入して家畜たちにエサを与える必要があります。馬、牛のためにエサを作って食べさせることは、冬特有の仕事と言っていいでしょう。
馬と牛では、与えるエサが異なります。馬には細長く硬い穀類(写真参照)を与えます。ひまわりの種に似た匂いがします。それを火にかけて温め、水を少し加えて与えます。これを朝夕2回馬小屋に持って行ってあげます。
牛にはフムール(馬の糞)をもとにしたエサを与えます。簡単に言えば、馬は食べたものをそのまま出すので、草を食べたあとのフムールは乾くと干し草のようになります。つまり、ほとんど草ですね。ある程度乾いた(あるいは凍った)フムールを集め、火にかけ温かくなったものに、粉末状の飼料と水を加えてよく混ぜます。それを夕方に1回与えていました(もっと寒くなったら朝夕2回あげるそうです)。ちなみに、ゲルの周りにたむろしている牛をよく観察していると、地面に落ちてるフムールを直接食べています。貴重な食糧なんですね。
干し草をあげる
子牛・羊・山羊たちには干し草をあげます。干し草は業者から買っていました。直方体に圧縮されたものが、大型トラックにたくさん積まれた状態で届けられます。それを干し草の囲いに積み、そこから毎日一定量家畜に与えていきます。
その他にも、雪が積もればゲルの周りの雪かきをしたり、川に飲料・洗濯その他もろもろ用の水を汲みに行ったり、馬を川へ連れて行き水を飲ませに行ったりします。
重労働:アルガリ運び
また、牛小屋やゲルの周りに落ちているアルガリ(牛糞)を集めるのも仕事の一つです。ゲルの囲いから50mほど離れたところにアルガリを積んでいる小山があります。子どもがすっぽり収まるぐらいの大きい袋いっぱいに、アルガリを詰めてそこまで持っていくのですが、それがまた一苦労…。重すぎて、私ではその袋を担ぐことすらできませんでした…。遊牧民の男性が力強いの納得ですね!
女性の仕事
さて、このような仕事を男性が外でしている間、女性は何をしているかというと、主に家事や子どもの面倒を見ています。
すべて手作業
ゲルの中にはコンロも洗濯機もお風呂も食洗機もありません。そのため人力で行う必要があります。朝起きて暖炉に火をつけ、スーテーツァイ(乳茶)をわかし、洗濯物がたまれば子ども用お風呂にお湯をためて手で洗い、手で絞り、乾かす。ごはんに食べるパンや麺も、買ってきたものを食べることもありますが、小麦粉をこねて作ることが多かったです。
日本で暮らしてたらなんとなーく時間が過ぎていきますが、ここでは生きるためのことをして1日が終わっていきます。日本での時間をきちんと有効活用しようと思いました。
「脂」を「油」に
特に冬、というかこの時期特有の仕事が「油」の抽出です。日本では油といえば、プラスチック容器に入った黄色い液体を想像しますよね。ところが遊牧民の家庭では「脂」から「油」をとります。
モンゴルの遊牧地域では寒さが本番を迎える前の11月に、冬・春に食べるための肉を用意します。各家庭で牛などの大型家畜を数頭、羊・山羊の小型家畜を10頭前後、屠畜・解体し他後で、ボルツ(干し肉)や内臓の詰め合わせなどを作ります。(下の動画で02:02から出てくる「肉の解体」は正しくはこの「ボルツ作り」です。)
その時に肉や内臓・血液と同時に得られるのが大量の脂肪分です。焼肉やすき焼きを焼く時に使う、いわゆるラードですね。肉から脂肪を切り分け、まとめて物置に数日置いておくと凍ります。それを再びゲルに持ち込み少し解凍します。
脂肪分の塊をひたすら細かく刻み、大鍋いっぱいに入れ火にかけます。すると、火の熱で脂が溶けていきます。溶けた「油」が「脂」を揚げてどんどん液状にしていきます。
それを鉄製のバケツに移して物置に一晩置いておくと、次の日には凍った「油」になります。ボールツォク(揚げパン)や揚げ物料理をするときなど、必要なときにこれから適宜取って使います。
おわりに
いかがでしたか?夏のモンゴルはカラッとしていて過ごしやすく、ナーダム(国を挙げて行う祭り)があったり、男性はそれに出る馬を調教したり、女性は乳製品作りで忙しかったりと、やることも多いです。
それに比べ、冬はあまり忙しくないだろうと勝手に思っていましたが、あっという間に1日が過ぎて行きました。田舎暮らしは「生きるために生活する」という印象を強く受けました。少しでも、モンゴルの冬のゲルの様子がお伝えできてたらいいな、と思います。